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「兄の眞一郎っていう人が記憶に関する実験で、記憶を封じたり、解放したり、書き換えたり、修正することができるようになったらしい。うたはそれをおぞましいと表現してる。眞一郎はさらにうたの記憶を骨董記憶という形で、純粋な骨董記憶にまぎれさせ、その鍵を自分で保管している……」
「梛くん、私、この前兄の部屋に偶然入ったの。骨董とかって、箱に入ってるよね?」
「そうだな、だいたい箱つきのものが多い」
「お兄ちゃん、骨董好きでもないはずなのに、紐で結ばれた箱がいくつか部屋にあったの。それ、何か関係あるかな?」
「……分からない。でも調べてみた方がいい。詩子の勘は、関係あると思ったんだろ?」
詩子が頷くと、梛は机の上に開いている本を閉じた。
「行こう、分からなくなったら、またこの日記に戻ればいい」
梛は本を元の場所に戻すと、詩子とともに図書室を出た。ちょうどその時だった。梛のスマホが震えた。
「もしもし、惠? うん、これから戻る。……分かった、急ぐ」
スマホを離した梛の表情はかたい。詩子は不安そうに梛を見た。
「ゲデヒトニスにお客さんだ。詩子のお兄さんと、カレシ」
梛の言葉に詩子は息を飲んだ。このタイミングで眞一郎と煉がゲデヒトニスに現れたことがやたら意味があるように思えてならなかった。
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