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慌ててる私とは違い、先生――海翔(ひろと)先生はゆっくりと私から離れると、綺麗な三日月型の唇で呼びに来た陸哉(りくや)の顔を見た。
「あ、うん」
「ちょっと気分が悪そうだったから、休ませてあげてただけだけど?
……もう大丈夫?
貧血、かな。
ちゃんと食べないとダメだよ」
海翔先生の手がするりと私の頬にふれて、離れる。
「誰かのせいで、熱が出てきてるだけだと俺には見えますけどね」
海翔先生を押しのけ、私のおでこにその大きな手でふれると、そっと前髪を上げて陸哉が自身のおでこをこつん、とつけてきた。
上使いで、眼鏡の上の隙間から私の目を直に見つめる。
上がっていく体温に思わず視線を逸らすと、ふっと笑って私から離れた。
「ほら。やっぱり熱が出てる。
……帰るぞ、妃菜子」
「……うん」
手を掴んで強引に立たせると、陸哉は私を引き摺るように部屋をあとにしようとする。
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