オヤジと僕とスタンレー

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「ん!」  ほんとだ、全然辛くない。なんだか香ばしい味がかすかにする。 「鼻に通すともっと香りがしてうまいぞ」  鼻から煙を出せばいいのかな?普段やらないことだから難しいが、二口目は鼻に通すことを意識してみる。  口の奥に煙をためて、鼻に… 「おぉ…!すごい、コーシーの味…!」 「ちゃんとするだろ?けっこう銘柄で煙自体の味も違うんだぜ、いろいろためしてみな」 「タバコって本当にうまいんですね…、ありがとうございます!」 「なんだそりゃあ、うまいと思ってなかったのか?」  うまいと思ってなかった。ただのストレス発散だ。今までなんて勿体ないことをしていたんだ僕は。  その後も、葉巻の男にタバコ豆知識を教えてもらいながらタバコ屋の隅で存分に煙を楽しんだ。  僕はこの店に来る渋い愛煙家達の仲間入りができたようで嬉しかった。まだ声は枯れていないが、いつか僕もしゃがれ声のちょいワルオヤジになるのだろうか。そんな歳の取り方も悪くない。  
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