第1章

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「何してるの?」とその子は静かに問いかけてきた。 私はその子がだんだん大人びてくるようなので少し怖くなった。 私は「飽き飽きしてるの、幸せすぎて」と応えた。 「やっぱり」男の子はそういったが、何がやっぱりなのか分からなかった。 その後私たちは黙り込んで、そのままじっとしていた。 そのうちゆっくりとその子は立ち上がった。 私はぼんやりと前を見ていた。 その子は何も言わずに歩いて行くので、私との距離はたちまち開いた。 でもそのすぐ後に私が飛ぶようにして追いかけたので、その子の背中はたちまち大きくなって、追いついた。 その子はもうしゃべらなくなってしまっていた。 私も口をつぐんで隣を進んだ。 時々あるのだ、こういうことが。 多分、その子も私と同じだ。 不安に苛まれていたら安心を求める。 だから、幸せにどっぷり浸っていたら、不幸を、求めたりするものだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加