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「そういや、金田は来なかったのか?」
石山が尋ねる。金田とは、阿久津探偵事務所の4人目のメンバーだ。
久城は少し間を置き、
「さっきまで一緒だったがな。」
と言った。
「なんだよ。その間はよ。」
「・・・なぁ、石山。お前はどう考えてる。」
「何がだよ?」
「所長の死因だ。」
「・・・心臓発作だろ?それがどうした?」
久城は、黙り込んで石山を見続け、言った。
「俺たち3人には、”ただの”心臓発作とは思えない、理由があるだろう?」
石山は煙草を灰皿に押し付け、2本目の煙草に手を伸ばした。
「何が言いたい。」
「あの”薬”だよ。」
阿久津探偵事務所では以前、依頼のあった死因調査の際に一時期”特殊な毒薬”を保管していたことがあった。
死亡者の遺品から出てきたそれは、心臓発作を誘発する効果があり、毒物反応が出ることもない液状の薬品であった。
それを服毒し、自然死に見せかけて保険金を出させようとした自殺の事件だった。
「”あれ”を使った他殺だっていうのか?」
「お前もそう考えなかったとは言わせないぞ。」
「落ち着けよ。あの毒薬はそうそう手に入るもんじゃない。少なくとも今の日本では不可能だ。」
「以前、ここにはあったろう。」
「おい、いい加減にしろよ。」
石山は腹立たしそうに煙草を持った手で久城を指差し、睨みつけた。
「お前は、俺らの中に、殺しをやった人間が、いるってのかよ。あ?」
「・・・・・。」
「大体よ、所長は張り込み中に一人で死んだんだぜ?それも張り込み始めて数時間経ってからだ。」
「所長の遺体の近くには、事務所のコーヒータンブラーが落ちていたろう。」
「だから俺らが事務所内でコーヒーに毒を盛ったって?おかしいこと言ってるぜ。それなら一口目でお陀仏だろうが!張り込みを始めて数時間経っていたし、コーヒーも半分以上飲んだ形跡があったんだろう!?」
「やはりお前もいろいろ考えていたんじゃないか。」
「ウルセェよ!」
ダン!!と石山が机を叩いて叫ぶ。
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