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二人の間に重い沈黙が流れる。
それを破ったのは、石山が乱暴に3本目の煙草に火を点ける音だった。
久城が呟く。
「・・・お前の結論はどうなんだ?」
「・・・わからねぇ。もしコーヒーに毒を盛ってたら俺ら3人とも可能だし、死ぬまでのタイムラグの謎もある。」
「そうだな。」
「・・・おい。いい加減話せよ。お前にはわかってるんだろ?それとも俺を疑ってんのか?」
「いや。お前は疑ってない。俺も犯人じゃない。」
ハッ・と石山は短く笑った。
「つまり金田を疑ってるわけか。」
「いや、確信している。あいつと俺にしかできない。」
「・・・説明しろ。」
久城は、とっくに燃え尽きていた手元の煙草を灰皿に放ると、改まって話し始めた。
「まず、死ぬまでのタイムラグだ。おそらくこれは予定より早く所長が事務所内で倒れることを恐れてたからだ。これによって容疑者は俺と金田に絞られる。」
「何故だ?」
「お前は知らないはずだからだ。石山が事務所に入ったのは所長室ができた後。所長は事務所内では所長室でしかコーヒーを飲む習慣は無かった。」
「それがどうした。そんなこと俺も知ってるぜ。」
「違う。お前は所長のコーヒーの”飲み方”を知らない。」
「飲み方?」
「所長はコーヒーを半分までブラックで飲み、もう半分はシロップを入れて飲むんだ。変わってるだろ。」
「は?なんだよそれ。」
久城はふふっと笑うと、
「所長も恥ずかしがっていた。だから、所長室が無い頃からいる俺と金田は、それを見てよくからかっていたんだ。」
「確かに知らなかった・・・。つまり、コーヒーシロップに毒が入っていたってことか・・・。」
石山はそう言いつつ4本目の煙草に火を点ける。
「あとは所長が張り込みに出るタイミングでシロップを隠し、毒入りシロップを出かけに手渡すなりすればいいんだ。あと、これは俺にしかわからないが、俺は犯人でないことは俺が知っている。つまり俺にだけ犯人がわかった。」
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