見えない心と近づく心

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「うん、親父は俺の結婚とか興味ないから会わなくていい……」 私の親との面識が終わり、結婚も決まって、宏一郎の家に挨拶に行かなきゃと思ってたのに、あえて行く必要がないと言っていた。 「本当の父親じゃないから……母さんもそっちの兄弟の面倒で忙しいし、式だけ呼べばいい」 宏一郎があまり家族の話をしなかったのは、お母さんが再婚したの同時にあまり家に寄り付かなくなったから。 「大学も就職も、出来るだけ実家から遠くに決めたかった」 そんな宏一郎だけど、私のためにちゃんと式も披露宴もすると言ってくれていた。 「女の一生に一度の晴れ舞台だろ?」 宏一郎本人は全然乗り気じゃないのに、だ。 だけど、それは私も同じ。 「別に形式や御披露目なんていいよ」 先に結婚した友人や知人の披露宴を見ても、自分がその立場になって祝福されたいとは思えなかったから。 自分が主役になるような晴れ舞台は必要ないような気がしたし、本当に祝福してくれる人なんて、招いてもごく僅かな気がした。 「ドレス着たいとか、そういうのはないのか?」 いつものようにホテルのベッドで戯れる一時を過ごしながら、宏一郎も驚いてたっけ……。 「うん、人前で着たいとか、小さい頃からそんな夢見たことないよ」 建て前や、形式なんてどうでも良かった。 ただ、こうやって愛されてれば良かった。 プロポーズしてくれただけで幸せ。 宏一郎の胸に顔をくっつけて、こうやって安心して眠れる毎日を送るだけで幸せになれるような気がした。 「今日香は変わってるな……まるで俺みたいだ」 他人から、宏一郎はクールだと言われているけれど。 ……たぶん、私の方が冷めたところがある。
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