ポップコーン

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「あ、映画?」 「そう」 「んー……話題だったから。てか暇だったし」 椅子を引いて正面に座る大浦くんが、今日初めて見せる戸惑いの表情。 あれ? 少し顔が赤くなってる? 「……嘘。本当はこの映画の原作の漫画大好きでさ、昔、凄い読んでた」 照れたように漏らした大浦くんの本音を聞いて、私の心もパッと何か灯ったみたいに明るくなった。 「そう! 私も中学の時に原作読んで、凄い好きになって忘れられない作品だったの!」 「うん、ブームも終わった頃に読んだ本だったし。少女漫画だったからあんまり友達にもこの漫画の話とかできなくて、一人で漫画真似てよく絵とかも描いてた」 「絵も描いてたの?」 「そう、授業中とか机に描いては消して」 凄い、本当に好きだったんだね。 「それ見たかったなぁ」 今日、観た映画の原作は、暴走族も出てきて男の子が読んでても全然違和感ないくらい少女漫画らしからぬ作品だった。 「で、映画になるって聞いて、はじめはアニメ化かな?と思ったけど、そうじゃなかったから残念で」 「わかる。あの漫画の動くの見たかったよね!」 でも、まさか、″ヒロシ″に似ていた大浦くんが読んでいたなんて……。 何か運命的なものさえ感じでしまっていた。 「俺さ、じつは」 「ん?」 サンドイッチを食べ切った大浦くんは、ポケットから何やら取り出ている。 テーブルに置かれたそれは、名刺……。 「漫画家なんだ」 「えっ?」 その名刺に印刷されていたのは ″大浦 純″ではなく、 【Hiro Okamoto】 という知らない名前だった。
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