ポップコーン

11/13
前へ
/290ページ
次へ
「……漫画家?」 「プロ?」 「一応、たまに週刊で描かせてもらってる……」 「漫画だけで食べていけてるの?」 「んー、まぁ、なんとか」 「初めて会った、漫画家さんて」 「……だよな」 驚いた。 車の査定とかやってた人が、漫画家に転職したっていうの? だけど、″おかもとひろ″? 聞いたことのない漫画家の名前。 貰った名刺に描かれているイラストは、大浦くんが描いたんだろうか? 少年漫画もコミックはわりかし読むけど、この絵柄も見た事はない。 「正直、売れてないよ」 私の表情から直ぐに聞きたい事を察知してしまう大浦くん。 気恥ずかしさを隠すように、コーヒーを飲みながら視線を外していた。 「なんて漫画描いてるの? 私、読める?」 ″Hiro Okamoto ″ 聞きながらスマホで検索していると、 「検索したら出てくるとは思うけど、俺と分かれてから見てもらうと嬉しいかも」 不意にその手に触れられて、ドキッとしてしまった。 「……そ、そうだね、照れ臭いよね」 「うん、でも俺が漫画描くキッカケになった作品の映画だったし、それを一緒に観ていた陣内さんだったから、秘密の職業打ち明けたんだよ」 ″一緒に″ ″秘密″ たまたま居合わせただけの私に、そんな風に言ってくれた事が嬉しくて、直ぐに言葉が出てこなかった。 触れられた手でスマホをバッグにしまいこむ。 「……どうして秘密?」 「まだ駆け出しだから。だから地元の連中には誰にも言ってない」 「そうなんだ……」 私ならソッコー自慢しちゃうかもしれないな。 あ、でも…… 「そういえば、盆か正月に同窓会あるみたいだよ」 「え」 「そんな内容のメール来てたよ、陣内さんにも来た?」 「……あ、ううん」 私、あんまり自慢する人いないや。 「行こうか迷ってるよ」 正直、人付き合いとか面倒臭くて。 高校卒業してから、あんまり同級生とかと会ったりはしてなかった。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1062人が本棚に入れています
本棚に追加