純 倫 愛

11/30
前へ
/290ページ
次へ
″大浦です″ そう自己紹介したのは、間違いなく、四年前に東京で別れた、あの大浦純くんだった。 まさか、こんなところで再会するなんて……。 心臓がいつまでもバクバクしてた。 「皆、めいちゃんと仲良くしましょうねー」 保育士が園児に呼び掛けると、うちのひなたも含めて、みんな 「はーぁい!」 と元気よく返事をしていた。 その様子を見て、にこやかに笑う大浦くん。 優しい眼差しは、ちっとも変わってはいない。 ……その視線に、私は入ってはなかった。 四年も経てば、数ヶ月だけ想い合った私のことなんて、パッと見ても分からないのかもしれない。 「あのお父さん、シングルなの?」 「いかにも東京の人って感じよねー」 そして、昔から目立つ彼の容姿は、園のママたちの間でも注目の的だ。 「あの人が役員するならしてもいいけどなー」 「いきなり新入りさんには無理でしょ?」 「だよねー」 私が瀬戸さんなら、ヤキモチ妬いてばかりかもしれない。 「役員してくださる保護者の方はくじ引きで決めたいと思いまーす」 部屋を見回したけれど、そこに瀬戸さんの姿はなかった。
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1064人が本棚に入れています
本棚に追加