1064人が本棚に入れています
本棚に追加
「役員になった保護者の方はこちらへ集まってくださーい」
無事に入園式は終わり、他の保護者と園児達はぞろぞろと部屋を後にしていき、
私を含めた役員は保育士の側へ寄っていく。
「役員の方は連絡網の先頭に記載しますので、連絡のつく番号を書いてください」
「個人情報載せたくないんですけどぉ!」
「そうそう! 連絡事項は園から一斉にメールしてくださいよ」
「メールだけでは確実ではないので」
毎年、保護者間で取り交わされる定例の会話の中、チラリ……と帰っていく大浦くんの背中を目で追った。
きまったスーツ姿は、宏一郎にお線香を上げてくれた時の事を思い出させる。
……″これからは俺が今日香もお腹の子供も守るよ″
彼の優しさと大きさに心が満たされた夜ーー
もう、あんな風に人を好きになることはないのかな?
そんなことを思ってボンヤリしていたら、話し合いも上の空。
「田丸さん!」
「あ、は、はい」
「田丸さんは番号載せても良かったですよね?」
「はい」
自己嫌悪。
あの時、別れを決めたのは自分。
それなのに、彼との再会に浮かれてしまっていることに気づく。
ーーこの日は、大浦くんと言葉を交わす事もなく園を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!