純 倫 愛

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「役員になった保護者の方はこちらへ集まってくださーい」 無事に入園式は終わり、他の保護者と園児達はぞろぞろと部屋を後にしていき、 私を含めた役員は保育士の側へ寄っていく。 「役員の方は連絡網の先頭に記載しますので、連絡のつく番号を書いてください」 「個人情報載せたくないんですけどぉ!」 「そうそう! 連絡事項は園から一斉にメールしてくださいよ」 「メールだけでは確実ではないので」 毎年、保護者間で取り交わされる定例の会話の中、チラリ……と帰っていく大浦くんの背中を目で追った。 きまったスーツ姿は、宏一郎にお線香を上げてくれた時の事を思い出させる。 ……″これからは俺が今日香もお腹の子供も守るよ″ 彼の優しさと大きさに心が満たされた夜ーー もう、あんな風に人を好きになることはないのかな? そんなことを思ってボンヤリしていたら、話し合いも上の空。 「田丸さん!」 「あ、は、はい」 「田丸さんは番号載せても良かったですよね?」 「はい」 自己嫌悪。 あの時、別れを決めたのは自分。 それなのに、彼との再会に浮かれてしまっていることに気づく。 ーーこの日は、大浦くんと言葉を交わす事もなく園を後にした。
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