純 倫 愛

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所長の白石さんは、仕事こそはバリバリこなすけれど、他の面は穏やかでトゲがなくて、とても話しやすい人。 Webデザインの実経験の少ない、おまけにシングルで小さい子どもを抱えた私を、良く正社員で採用してくれたな、と驚きつつも、出会った時からその寛大さには有り難く甘えさせて貰った。 でも、異性としては意識したことはない。 白石さんからも、そんな素振りや視線を感じた事は無かった。 「同僚と恋愛関係になるのはタブーだと思ってた。なんせ少人数の会社だから。仕事に影響出ると思って」 「……じゃあ……」 「″なんで? 今さら?″ ってだろ? ……俺も分からない」 今まで見せた事もないような、照れた笑顔を浮かべて、 「けど、カンかな? ……今を逃したら田丸さんみたいな一生懸命な女性とは付き合えないってそう思った」 「……」 ″一生懸命″……。 今まで、誰からも貰った事のないような言葉で私を惑わす。 「仕事も続けて貰いたいし、それに生活のために無理もさせたくない、側にいてそれを見守れるなら″夫″が一番かな?と思って」 けれど、その言葉や表情からも遊びやからかいの類いではないと分かった。 「三年も打ち明けずにいたんだ、返事も首を長くして待ってるよ」
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