純 倫 愛

21/30
1031人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
私達の母校である中学校のすぐ側に、確かに新しいコンビニが出来ていた。 大浦くん親子はレジ付近から漂う香ばしい匂いにつられるように寄っていく。 「メイ、ばあちゃんに内緒で唐揚げも食べるか?」 「ナイショってなん?」 一方、ひなたは揚げ物やスイーツよりもキャラクター玩具の入ったお菓子に関心を持っていかれて、小さな篭にそれを入れていた。 「田丸さん、桜、まだ咲いてるよ」 レジで精算を済ませた大浦くんが中学校のグラウンドの桜を指差して、懐かしい約束を思い出させた。 ″その桜を今日香ちゃんと見たいなって。 ……なんでそれが彼女じゃないのかわからないけど″ あの時の約束は桜の花弁のように儚く散ったように思ったけれど……、今、不思議な形で果たされようとしている。 それぞれ子供の手を引いて、自然と桜の方へと歩いていった。 「大浦くん、もう漫画は描いてないの?」
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!