純 倫 愛

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「つまんない俺の話ばっかしちゃったな」 「……そんなことない」 大浦くんは、砂のお城を作る子供達を見守っていた視線を私に移して、 「……今日香は……?」 「え」 「今日香は地元で何の仕事してるの?」 久しぶりに聞く名前の呼び捨てで、私をドキッとさせた。 「広告デザインの仕事してるよ。妊娠中から勉強始めて運良く雇って貰えたの」 「へぇ、妊娠中に資格取ったの? それ凄くない?」 「うん、安静にしておかないといけない時も多くて無駄に時間があったから……」 「がんばり屋さんだな」 「……うん、精一杯やったよ……」 そして、 ″田丸さんみたいな一生懸命な女性と……″ 白石さんからの交際の申し込みを思い出した。 それは、女としてとても喜ばしい事のはずなのに、大浦くんと会ったことで頭からスッカリ消えていた。 白石さん、ごめんなさい。 あなたを異性として意識するまでに時間かかりそうです。 気持ちが重くなり、言葉を続ける事ができなくなった私に、大浦くんは相変わらずの優しい表情を見せて、 「……俺も頑張ろうっと」 「うん、て何を? 家業? 漫画?」 「どっちも」 「あー……」 「そして、恋も……」 「…え…?」 「今日香と会えるかもしれないって、そう思ってこっちに帰ってきた俺は、浅はかで浮気性な男なんだと思う」 私にあってはならないモノを感じさせていた。 「今日香が近くに、そばに居るって思うだけで、また漫画を描いてみようかなって気持ちになるんだ」 禁断の恋の予感ーーー
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