純 倫 愛

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宏一郎からの最後の贈り物になった木製の時計は、今でも私の部屋で狂うことなく時を刻んでいる。 その針の音と連動するように、私の鼓動もドクドクと速くなった。 白石さんの時とは違う高揚感を胸に、メッセージを見る。 【今日は桜に付き合ってくれてありがとう】 ″桜″……。 文字の一つ一つがとても愛しいものに見える。 直ぐに、【キレイだったね】と返事を返した。 大浦くんからも直ぐに返ってきた。 【桜だけじゃなく、ツツジも菖蒲も、紫陽花も、向日葵も、紅葉も 今日香と観に行きたい】 ……五年前と同じ言葉で、私の心を花いっぱいにする。 だけど、なんて返して良いかわからなくてスマホを握ったまま考えていると、 ブブブブ♪♪ それを待つことなく、続けてメッセージが来た。 【会ったばかりなのに会いたい、 会えるなら電話してほしい】
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