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映画が終わった。
泣きながら席を立つ若い女の子の姿もあった。
……私は原作のように泣けなかった。
ま、そもそも別のことに意識がいって集中してなかったけどね。
その意識の矛先、隣の席の男を見ると、
「え」
彼も私の事を見ていた。
明るくなった館内、お互いに初めてちゃんと顔を見る。
「どこかで見たことあるんだけど……違ったらスミマセン、同級生じゃないかな?」
その言葉で、いろんな同級生の顔が頭の中を駆け巡った。
見た事あると思ったのは、やっぱり知り合いだったから、
しかも、
「……大浦……くん?」
中学の時、この映画の原作の″ヒロシ″に勝手に似ていると思っていた人。
「そう! 大浦 純!すげっ、わかんの??……え、と、」
凄い偶然だ。地元でもないのに。
「私は、た……あ、旧姓が陣内です」
ーー陣内 今日香 (現在 田丸今日香)
あなたがすぐに名前が出てこないのは仕方ない。
とても地味で目立たない生徒だったから。
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