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「うん、そう。福岡の専門学校に行ってから……大浦くんは?」
「俺もー。てか、最初は神戸に就職して、そこ辞めて東京に来たんだ」
「へー……。神戸で何してたの?」
「車の査定とか」
「査定だけ?」
「いや、整備も」
小中時代に殆ど共通の友人もいなかったのに、話は途切れることなくて。
二人いつの間にか映画館前のカフェで軽食を取ることに。
「……結婚してるんだよね? 時間は 大丈夫?」
サンドイッチを注文して待つ間に、大浦くんが私の左の薬指を見た。
「大丈夫、いつも夫は帰り7時過ぎるから」
大丈夫、といいながらも一応時計を確認。
……3時半か。
電車で一時間だから買い物もできる。
「あの大人しかった陣内さんが人妻かぁ~、なんか不思議な感じ」
「……そ?」
29才だもの。
結婚してておかしくない年齢だし。
そもそも、あなたは?
「……あ、俺? まだ独身だよ」
私の聞きたかった事を察知した大浦くんは指を、″ ほら ″ みたいに見せてからホットドリンクとサンドイッチをトレイごとテーブルに置いた。
「彼女はいるんだけどね」
そう言って笑う大浦くんの顔を見ていたら、さっき見た映画の原作の″ヒロシ″を思い出してしまった。
「大浦くんは、なんで観ようと思ったの?」
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