私が描く物語

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上野恩賜公園。 上野公園に紫陽花がこんなに咲いてるなんて知らなかった。 「凄いね……私より背丈あるかも」 もっと、庭に咲いているようなものを想像していたからちょっと驚いた。 「前にこの辺を舞台に漫画を描いた事あって、それで知ってた」 大浦くんはピンク色の紫陽花をスマホに収めながらゆっくりと歩く。 また絵の参考にでもするのかも。 「私、……紫陽花って昔は好きじゃなかったな」 「あぁ……俺も。 ジメジメした季節に薄暗い所に咲くイメージがあったからかな?」 「そうだね、そういう所に多かったよね、なんかお化けが出そうな所に」 「お化け……うん。寺とか無人の家とかな、確かに紫陽花が咲く所は怖いイメージがあった。……でも、今は俺は好きだよ」 私も今は好き。 そう言おうと思ったけど止めた。 何でかは分からないけど、言えなかった。 「紫陽花が終わったらなんだっけ? 観に行くとしたら やっぱり向日葵かな?」 そんな私の手を大浦くんが握ってきた。 久しぶりの優しい感触に何故か力が抜けそうになる。 大浦くんは少し先の未来の約束が好きな人。 「……向日葵は好きじゃないよ……」 ずっと先の未来の約束もしようとしてくれていた。 「……今日香……」 「もう、大浦くんと一緒には行けない……」
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