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それから君は、放課後ほぼ毎日僕の所へ来るようになりました。
ランドセルを横に置いて、僕に凭れて、膝を抱えて、君は僕に色んな話をしてくれました。
お父さんやお母さんのこと、好きなアニメのこと、好きな食べ物のこと……。
君の話はいつも他愛なかったけど、いつしか僕は君が来て話をしてくれるのが、楽しみになっていました。
けれどある日、君が泣きながら宝箱を僕の根元に埋めた時に、僕は君がとても傷付いていたんだということに気が付きました。
そして何故、いつも僕のところに一人で来ていたのかも。
「おでこに大きな傷ができたの。誰かに見られるのが恥ずかしいの。だからもう、この宝箱はいらないの」
可愛い髪留めがいっぱい詰まったこの宝箱を泣きながら埋める君を見て、僕は自分の無力さを痛感しました。
あの時、僕がもっともっと花びらを散らしていれば、君はケガをしなくて済んだんだろうか。
そう思うと、見ているだけで何もできなかった自分が、本当に歯痒かったのです。
それからほどなくして君の転校が決まり、宝物をここに残したまま君はいなくなってしまいました。
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