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「……石森さん。……大丈夫?」
そこで初めて、先生が気遣うように声をかけてきた。
中庭の方で時たま歓声や拍手が上がり、ここだけやたらと静かに感じる。
私はゆっくりと立ち上がり、スン、と鼻を啜りながら先生に目を向けた。
「……友達……やったんです」
「え?」
「私の、この学校での最後の……大事な大事な……友達やったんです」
先生は無言でじっと私の顔を見つめ……。
直後、桜が植わっていた場所におもむろに首を巡らせた。
「……そう。……そうやったんやね……」
先生は多くを語らず、静かにそう相槌を打った。
私は便箋を封筒にしまってから、再びしゃがんで撒き散らしてしまったシュシュやヘアピンをかき集める。
すると先生もそれに倣い、しゃがんで同じようにそれらを拾い集めてくれた。
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