3月4日

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4日前に、一目惚れしたあの人。 …………何一つ、本当のことを話してくれなかった、自称、余命1ヶ月の『吹雪さん』。 (……いやいや、まさか。……そんな偶然、あれへんて) あまりのあり得なさに、何故かひきつるような笑みが浮かぶ。 あの人がこんなとこにいるはずないし。 ……まぁ、背格好は似てる気もするけど。 たからって、私ですら数えるほどしか来たことないこの場所で、たまたまあの人に会うなんてそんな……ドラマや映画じゃあるまいし……。 その時、人の気配に気付いたように、ふっとその人がこちらを振り返った。 その顔を見て、私は愕然とする。 白い顔に、血色のいい唇。 風で少し乱れた柔らかそうな猫っ毛。 (う……嘘やろ……) 何度も何度も心の中で否定して、頼むから人違いであってくれ、と懇願したその人は。 間違いなく、4日前に私をフッたあの『吹雪さん』だった。  
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