1359人が本棚に入れています
本棚に追加
/403ページ
4日前に、一目惚れしたあの人。
…………何一つ、本当のことを話してくれなかった、自称、余命1ヶ月の『吹雪さん』。
(……いやいや、まさか。……そんな偶然、あれへんて)
あまりのあり得なさに、何故かひきつるような笑みが浮かぶ。
あの人がこんなとこにいるはずないし。
……まぁ、背格好は似てる気もするけど。
たからって、私ですら数えるほどしか来たことないこの場所で、たまたまあの人に会うなんてそんな……ドラマや映画じゃあるまいし……。
その時、人の気配に気付いたように、ふっとその人がこちらを振り返った。
その顔を見て、私は愕然とする。
白い顔に、血色のいい唇。
風で少し乱れた柔らかそうな猫っ毛。
(う……嘘やろ……)
何度も何度も心の中で否定して、頼むから人違いであってくれ、と懇願したその人は。
間違いなく、4日前に私をフッたあの『吹雪さん』だった。
最初のコメントを投稿しよう!