最強の魔術師

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◇ 一寸先も見えない暗闇の中、ソレは痛む喉を押さえながらそっと息を吸い込んだ。 もうどれだけ時がたつのだろうか、こんな闇の中では確認などできないが、それでも膨大な時が流れた事はわかる。 空腹は限界を越え、刃で裂かれたような激痛が胃を襲う。 長い間水分を取ってないためか、喉はがざがさにひび割れ、声を出す事もままならないのだ。 ソレは自身の強靭さを恨んだ。 こんなにも苦しいのに、いっこうに死の気配が感じられない。 気がつくと壁の水滴を舐め、小さな虫を口に含んでいる。 心はとっくに死んでいるというのに、体は生きる為に動いているのだ。 遠く、恋人の声が聞こえてくる ああ、彼女はまだ生きているのか、死ぬのなら、彼女を想いながら死んでゆきたい。 不意に、ガラガラと何かが崩れるような音が聴こえた。 暗闇に一筋の光が差し込んで、それがだんだんと大きくなってゆく 「あら、ミイラか白骨死体だと思いましたのに、まだ生きていらしたの」 強い光が逆光となり、目の前の人物を照らし出した。 サラサラと美しいブロンドの髪が風に流れる 「クリス・ルドーク、これから貴方の主人となる人物の名前ですわ、覚えておきなさい」 最強の魔術師と災害と呼ばれた悪鬼の会合、この出会いはどんな意味を持つのだろうか。 物語は加速していく
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