超・妄想コンテスト参加作品

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僕には肌の合わない家族がいる。 厳格だが理解力はある父親。さらには包容力だけが取り柄の母親と、幼稚園に勤めるガサツな大姉。そして、短大に通う呑気者の小姉との5人家族だ。 が、誰とも肌が合わない。 その理由は…こんな、なんてことのない夕食風景にも現れる。 『ねえ、私の趣味ってなにかな?』 呑気者の小姉が一人称なのか、三人称一視点なのか、わからない文言で質問してきた。すると母親が、 『あなたの趣味って…なんなの?』 たった今。それを聞かれた側が、聞いた人間に尋ね返すと云う、この無意味な会話。 『えっとね…まず、ネットオークションでしょ。それと他にもユーチューブ。ツイッター。ブログにネトゲーかな』 さらには…答える不思議。 『インドアだね』 『そんなことないよ。合コンも大好きだもん。こう見えて結構、アウトドアなんだよ!』 啄木鳥のように口を尖らせて、大姉に食って掛かる小姉。でも…合コンを、 アウトドアと言い切るとは…… 『どうしてそんなことを、今さら聞くんだ』 父親が箸でたくあんを摘まむように、口をはさんできた。 『就活よ。夏までには内定もらわないと、後が厳しくなるもの』 『それと、あなたの趣味がどう関係するの?』 『お母さんは何も知らないんだよね。ESに書かないといけないの』 『いー…えす…?』 『エントリーシートのこと』 『なんなの、それ?』 『簡単に言えば履歴書みたいなもの』 『なら、映画鑑賞とか読書とか、適当に書いとけばいいじゃないの』 『いかん、いかん!』 父親が眉間に太い皺を寄せて、箸で母を嗜めた。
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