第1章 side→Hana

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
やっと見つけた。探偵のお兄さん。 私、芳野華が12歳だったからそれは今から5年前だった。 その日は卒業式で、お祝いも含めて家族でアウトレットに行って買い物したり、食事をしていた。 その時。 「どうしよう…迷子になっちゃった…」 私が勝キラキラしてるお店に夢中になってそのまま両親とはぐれてしまったのだ。 「うっ…ふぅっっ…どうしよう…」 涙がぼろぼろこぼれた。携帯もお金も持ってない私はそこで泣き続けるしかなかった。 「どうしたの?」 「わっ!……」 急に後ろから男の人が話しかけてきて私は思わず声をあげてしまった。 「はぐれちゃったの?大丈夫?」 「…」 恥ずかしくて私は何も言えなかった。 「泣かないで。ほら!これあげる!」 それはさっきのキラキラした店で見た花の髪飾りだった。大人の女性用だ。 「ほんとはある人に渡すつもりだったんだけどね。もういいんだ。君が大きくなったらきっと似合うと思う。泣かないで!」 「ありが…とう」 「どーいたしまして!じゃ、お母さん探そうか!」 そのお兄さんは細くてでも大きくて、温かい手で私の手をそっと包んでくれた。 もう中学生になるのに恥ずかしい。 でも、嬉しかった。 「華ーーーー!!!」 「お母さん!ごめんなさい…。」 「よかったね。」 「お兄さん、ありがと…」 「いえいえ。もうはぐれちゃだめだよ?」 「華がお世話になりました。本当にありがとうございました。」 「いえいえ、一応探偵なんで。」 そういってそのお兄さんはニッコリ笑顔で去っていった。 五年たった今でもそのお兄さんの笑顔が忘れられない。少し中性的で。笑うと顔がクシャってなる、可愛い笑顔。 お兄さんからもらった花の髪飾り。すごい大人っぽくて、17歳になった今でもすこし似合わないんじゃないかなってくらい。 誰にあげるつもりだったんだろうか。 その髪飾りが入っていた紙袋には、こう書いてあった。 《遥へ。 君に合うと思って買ってみたよ。 あと、仕事場の電話番号。 また何かあったら相談してね。 探偵事務所 黒猫 03-○×○×‐○×○×》 03ってことは東京。でも私は埼玉にいた。でも中学生の私は会いに行けなくて。17歳の今。やっと君の居場所が分かったんだ。 ずっと好きだったの。子供のひとめぼれだけど。あなたは覚えててくれるかな?
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!