第1章

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山口は建築メーカーの営業マンである。 ルートセールスで顧客先である三鷹建築を週に二回は定期訪問する。そのたびに苦いコーヒーが出てくるのだが正直勘弁してほしかった。 コーヒーを飲む間にも特に話すネタが無いのだ。 営業を長くやっていると嫌でも感じる事がある。顧客との相性だ。 どうにも居心地が悪い事務所。それが三鷹建築だった。 では行かなければいいのかといえばそうは行かなかった。 他メーカー先との併売先であり自社の製品を売込まなければならない立場なのだ。 三鷹建築の営業社員に売り込んでも風当たりは一様に冷たい。 それに最近は三鷹建築がどれぐらいの売上げがあるのか疑問だった。いつ来ても閑散としている。社員は何かしら仕事はしているが活気がない。 社員数の割には仕事の受注量が少なすぎる気がするのだ。
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