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「ちくしょう、早くしないと‥‥、」
男は荒れた息使いのままパソコンを打ち続ける。
冷たい汗が頬を描いてそのまま、地面へ崩れ落ちる。
男はとにかく焦っていた。
取り返しのつかないことになるからだ。
「カタッ」
エンターキーを押した小気味良い音が部屋で響き渡る。
男はホッと安堵の笑みとは言い難い不思議な笑みを浮かべた。
おそらく、生涯こんな表情をしたことがなかった。いや、むしろ経験してはいけない、そんな顔だったと思う。
男はそのまま、椅子から立ち上がり、ベットへ倒れこんだ。
買ったばかりの新品のマットレスに体を預け、天を仰ぐ。
新品独特の香りが、鼻に突き刺す。
でも決して嫌いではない。
時が止まっていると疑うまでの空気とは裏腹に、自分の身体が徐々に軽くなっていくのを感じた。
ーーーどうやらここまでようだ‥‥‥‥、
覚悟を決め、まるで身体ごと誰かに捧げるかのように、仰向けに寝転がる。
天井の木の木目を見るのが妙に新鮮な気がする。
こんな気持ちで寝るのは初めてだからか、見るもの全てが新しく見える。
だが、そんな景色をよそに、男は目を閉じた。。。
俺たちは今まで、何をやってきたのだろう、、、
なぜ、こんなことになってしまったんだろうか
何を間違えたのか
何を考えたのか
何を求めていたのか
何をしたかったのか
こういう感情は「後悔」と一般的には呼ぶのかもしれないが、どうやら、そういうわけではなさそうだ。
言うなれば、子供の悪戯心に墨汁を点々と垂らしたような、、、そんな気持ちなのかもしれない。
でも、その汚れはもう拭い去ることはできない。
何故なら、すでに真っ黒の雫は決められた重力という巨大な力によって、決められた方向へと向かっているのだから、
頭がそんなことでいっぱいになった頃、男の姿はどこにもなかった、、、、、
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