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ランドセルのあの子
家はそこそこ近所なのに、学区の関係で別々の小学校に通っていたあの子。
赤いランドセルがよく似合っていて、内気少年だった俺は、話しかけたくてもそれができず、遠くからその姿を見つめていた。
でも、決めてたことがある。
中学は一緒だから、それをきっかけに話しかける。そしてあの子と友達になるんだ。
春休みを迎え、入学を指折り待った。
そして迎えた入学式。俺を含めたたくさんの新入生の中にあの子を探す。
いない。いない。いない…。
長髪が短髪になったとかなら、雰囲気が変わって見つけられなくなるかもしれないけど、あの子は元々髪は短かった。そもそも、あのかわいい顔を探し出せないなんてそんな筈がない。
まさか、どこかの私立中学を受験していて、そっちに行ってしまったのだろうか。
これだけ探しても見つからないのだ。その可能性は高い。
がっくりと項垂れて位置を決められている椅子に座る。そんな俺の隣にあの子がいた。ただし、学ラン姿で。
…今じゃすっかり男っぽくなって、当時の面影はまるでない親友。そいつが俺の初恋の相手だということは、一生内緒で墓場に持って行く話だ。
ランドセルのあの子…完
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