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「カズくんも、辞めた方がいいよ」 「んー?」 「赤ちゃん、生まれるんでしょ」 ぽかん、と固まるカズくんの手から煙草の箱を抜き取って、ぽと、とベッド脇のゴミ箱に落とした。 ふふん。 これでもう、拾い上げる気にはなれまい。 「知ってたの」 「ちょっと前、職員室で聞こえた」 日直で教室の鍵を届けた時に、先生たちの雑談が耳に聞こえてしまった。 カズくんの奥さんは、今妊娠中らしい。 「だから私、カズくんからも卒業する」 薄い唇の隙間から、細く長く紫煙が昇る。 カズくんはやっぱり「ほーん」とだけ言って、枕に頬杖をついていた。 「胎児にも副流煙って良くないんだよ」 「家ではすわねーし」 「ほーん」 ほーん。 へー。 喜んでいいのか悪いのか。 軽んじられてる気もするし、私の前では気が抜ける、と言われてる気にもなる。 カズくんは実に美味しそうに煙草を吸うので、実は私は嫌いじゃない。 だけど。 きゅっ、とベッド近くの灰皿に煙草の火種が押し付けられて、最後に一際強い香りが周囲に漂う。 「最後にもう一発、シテいい?」 「あほか。帰る」 嫌いじゃないけどこの男は最低だ。
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