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そして俺は、あの女に近付く。
メッセージアプリで『ちょっと聞いて欲しい事がある』と最初に呼び出した。
もちろん、幼馴染の名前を出して。
それからと言うもの、こっそりやり取りをしてはあの女に幼馴染の有る事無い事を吹き込んでいった。
浮気してるとか、お前の悪口言ってたとか。
嘘八百を並べた。
最初は疑っていた女も、リアルな俺の芝居を次第に信じる様になった。
女が浮気していた時点で、2人の関係性は脆くあっと言う間に崩れた。
『そんな人だったなんて…なんで今まで気付かなかったんだろう』
俺の前で、女は泣き崩れた。
女の裏切りを知っている俺は、表面は心配する振りをして、心の中では女の愚行を嘲笑っていた。
自分の事を棚に上げて、何を泣いてんだクソ女め。
何も知らない普通の男なら、ここで女を抱きしめるのかもしれない。
ならばそうしてやろう。
両腕で包み込む様に、俺は女を抱き寄せた。
泣いていた女は、そんな俺にギュッとしがみ付く。
『…慰めてやろうか?』
俺の一言で、この女が落ちるのは簡単だった。
そのまま俺は、この嫌いな女を愛しい幼馴染の家で抱いた。
気持ちの行き場のない夜の生活に慣れていた俺は、嫌いな女を抱く事くらい簡単な事だった。
俺の上に跨る女は、快楽に溺れていた。
自ら腰を動かし、気持ち良さそうに喘ぐ。
その時、玄関が開く音がした。
幼馴染のご帰宅だ。
愚かな女は自分の彼氏が帰って来た事に気付かず、夢中でよがっていた。
ベットの前に佇む、俺の愛しい幼馴染。
大好きな2人の裏切り行為を目の当たりにした幼馴染の顔は、泣きたくても泣けずなんとも言えない表情を浮かべていた。
初めて見せた、苦渋に歪んだ顔。
絶望を味わった顔。
次第に、幼馴染の顔から表情が消えた。
愛しい幼馴染の新しい一面を見て、思わず俺は口角が上がった。
普通なら、愛しい人の苦しむ姿見るのは嫌なはずだ。
だが俺は、この時高揚感を感じた。
歪んだ独占欲は、本当に守りたい人を壊す事で何かを補おうとしていた。
それだけ俺は、壊れてしまっていたのだ。
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