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ホテルから出た俺は、タバコを吹かしながら自販機を探す。
大学に入ってから、俺はよくコーヒーを飲むようになった。
それは、少しでもイライラを落ち着かせる為。
タバコも同様だ。
…そういやあいつは、俺がタバコを吸うのを嫌がっていた。
『お前にタバコは似合わない』
口癖のように言っていた幼馴染を思い出し、苦笑いする。
今ではすっかり、俺はヘビースモーカーへと変貌していた。
幼馴染に会った最後の日から数ヶ月。
あの日から、あの女はもちろん、俺も幼馴染から着信拒否されている。
もしくは、ケータイを変えたのかもしれない。
家に会いに行けばいいとも思うが、鍵を変えたらしいあの部屋に訪ねる者はいないのか、いくら呼び鈴を押しても幼馴染が出てくる事はなかった。
まぁ、あの部屋は呼び鈴を鳴らすと訪問者が画面に映し出される事から、例え部屋にいたとしても絶対に俺を受け入れてはくれないだろう。
それはさて置き、自分で撒いた種でありながら、やはりあいつに拒否されたままでは何もかもやる気が起きない。
そして、そろそろ壊れたあいつの修復をしなければ。
早くしないと、あいつの心の隙間にまた他人が入り込む可能性があった。
壊したモノは、自分で直さないと。
あいつは俺の物。
誰にも渡さない。
駅に向かって道なりに進んで行くと、缶コーヒーのある自販機を発見した。
ズボンの左ポケットから携帯灰皿を取り出してタバコの火を消し、灰皿を仕舞いながら右ポケットから小銭を取り出す。
自販機に小銭を押し込んで、購入ボタンを押す。
俺はブラック無糖派だ。
元々はコーヒーが苦手だった俺は、飲んだ後に感じる違和感が嫌だった。
今では、胃もたれする感じが癖になった。
お腹が少し重くなる感覚が、俺のドス黒く侵食された気持ちとよく似ていた。
ガコンと音を立てて機械から吐き出された缶コーヒーを開け、一気に飲み干す。
「さて、回収に参りますか」
空になった缶をゴミ箱に投げ入れ、駅に向かって歩き出す。
あのブラコンの弟の事だ。
絶対に俺の幼馴染を合宿に連れて来るに違いない。
久しぶりに会えるかもしれない可能性にワクワクしながら、愛しい幼馴染が見せるであろう苦痛の顔を予想した。
それだけで、俺はゾクゾクした。
今から行くぜ。
俺に可愛がられるのを大人しく待ってろよ。
愛しい五十嵐和樹くん。
END
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