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「お忘れのようですが、私は前の世界ではしがない1市民でした。そして、この世界に来るに当たって特別な力などは貰っていません」
「覚えていますとも。ですから、御使い様のお体を守るために鎧を………」
北斗の説明に国王は言いたい事を気付いたようで何も言わなかった。
しかし、大臣は気付かずに言葉を重ねている。
「私はこちらの世界の一般市民と大差ない力しかありません。いえ、魔力が使えない分弱いでしょう。訓練を受けていない一般市民がフル装備の金属鎧を身に付けた場合、どれだけ動けますか?」
全てを説明し、漸く大臣は北斗が言いたい事を悟った。
そう、鎧を付けた北斗は一歩も動けないのだ。
薄い板状なうえ、鉄よりもオリハルコンは軽い。
しかし、大の大人一人をすっぽり覆う金属が軽いはずはない。
常日頃体を鍛えている人間なら兎に角、普通の人の北斗にそれを着て動けと言う方が無茶である。
「そ、そんな………良い案だと思ったのに」
がっくりと崩れ落ちる大臣。北斗にはかける言葉もない。
「折角作ったのだ。受けとるだけ受け取っては頂けないであろうか?」
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