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「課長、頭痛が酷いんで早退させて下さい………」
「大丈夫か?顔が………もとい、顔色が悪いぞ、谷川君?」
頭を抑え呻く青年に、課長と呼ばれたハ………髪が不自由な中年男性が聞く。
「ちょっと大丈夫じゃなさそうなので、病院に行きます」
「ツッコミが入らないなんて重症だな。早く帰りたまえ」
「すいません、失礼します」
そう言って顔が悪い、違った、顔色が悪い青年谷川北斗(たにがわほくと)はロッカーへと歩き出す。
作業着からスーツへと着替え、最寄り駅へと歩む。その足取りはフラフラと危なっかしいものだったが、すれ違う人は構いもしない。
駅につき定期を自動改札にかざす。無事に改札を抜けた北斗はホームのベンチに座り込んだ。
普段なら電車の待ち時間には携帯で小説を読む彼であったが、頭が割れるように痛い現状ではその元気もない。
「まもなく北行電車がまいります。黄色い線の内側に下がってお待ちください」
アナウンスが流れ、青色の車体がホームへと滑り込む。
平日昼間の車内は空いていて、北斗は苦労することなく座る事が出来た。
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