497人が本棚に入れています
本棚に追加
ドアが閉まり電車が動き出す。駅間が短いため、すぐに停車するが乗客の動きは少ない。
北斗は扉上部に取り付けられたモニターに目を向けた。
裏和テッズ3連勝
モニターにはニュース速報が流れていた。
「うん?あ~あ………」
次々流れるニュースの中の一つを見た北斗が反応する。
牛間舟渡駅(うしまふなとえき)の券売機にて計算違いによる過剰徴収発覚
「NR班の連中、修羅場だな………」
北斗が勤めるニシン電機は鉄道関連機器のサービス会社である。
改札機から列車集中制御システムまで、あらゆる機器の設置とメンテナンスを行っている。
ニュースにあったNR牛間舟渡は、都内から彩玉県に走る最強線の駅だ。
その駅で券売機の不具合があったとなれば、担当するNR班は修羅場となる。
その時彼は他人事のように考えていた。
同じ会社である以上、どこかの部署が多忙となれば他の部署にも皺寄せはくるもの。
しかし頭痛で頭が回らない彼にはそれが判らなかった。
そんな彼に現実を突きつける呼び出し音が鳴る。
実際には携帯がマナーモードになっていたため音は鳴らなかったのだが。
懐からガラケーを取り出した北斗は着信者の表示を見て顔をしかめた。
最初のコメントを投稿しよう!