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駅に常備された工具鞄に入っている交換部品で対応出来れば良いが、復旧出来ない部品が多ければ動かせない券売機が多くなってしまう。
「酔っぱらいはいい迷惑だよな。おっ、遅々父行きの電車が来るよ」
「それじゃ行ってきます。一台でも多く復旧させてきますよ」
8キロの重さがある工具鞄を手に北斗は階段を降りホームへ移動する。
到着した電車に乗り込み、空いていた座席に座り込んだ。
先程飲んだ薬の副作用なのか、眠気に襲われた北斗は抵抗することなく瞼を閉じるのだった。
「遅々父~遅々父~遅々父駅でございます」
「………はっ、いけねっ!」
アナウンスで目が覚めた北斗は鞄を掴むとダッシュで電車から降りた。
薬が効いたのか眠ったからか、頭痛はかなりよくなっていた。
ホームから改札へ行き、改札脇のドアを開けて駅員室へと入る。
「どうも~、ニシンです」
「待ってたよ、ニシンさん!」
遅々父駅の駅員は北斗を券売機室へと誘う。
券売機が一台でも生きていれば良かったのだが、全滅しているため切符は全て駅員さんが手売りしていた。
平日昼間でまだ客が少ないとはいえ、通常なら券売機任せでやらずとも良い業務を行っているのだ。
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