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【備考】
後半の描写は良いのだが、構成のバランスが悪い。
『非常に不可解な話』と始まるのに、その内容は老人の乗った車に轢かれましたというありがちな話なのがよろしくない。不可解なのは『引き篭りの私が事故に遭ったこと』なので、それが読者に分かりやすく伝わる文章でなければならない。
描写の順としては“私”が引き篭りである描写を先頭に持って来たが、これは読者に「この人は家から出ないんですよ」と暗に説明する意図がある。その情報が読者に入っていれば、「私は交通事故に会った」という文章だけでも不可解さ、奇妙さを感じて貰えるのだ。
もうひとつ、一人称ならではの描写として「それからここで寝ている」という文章がある。気を失うほどの交通事故に会った後に寝ている場所とはどこだろうか?書かなくても読者は察するものだ。むろん病院と明記しても構わないが、せっかく一人称なのだから、より唐突さ、訳の分からなさを表現するためにこう描写した。それまで一度も“ここ”についての説明がないので、読者は“ここ”がどこなのかすぐには理解できない。その感情は、まさに“私”が目を覚ましたときに“ここ”がどこだか理解できない感情と同一なのだ。
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