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【原文】
男は階段を降り、異国の港に降り立った。
長い船旅で凝り固まった身体をほぐし、辺りを見回す。
壁を白く塗られた建物や、店先にズラリと並ぶ様々な魚介類。
男には、それらすべてがとても新鮮に感じられた。
空を飛ぶ鳥も、船を泊める準備をする漁師も、地面に敷き詰められたなんの変哲もない石畳でさえ、男にとっては、『何かあるのではないか』という好奇心を抱かせる存在だった。
【改正文】
波の砕ける音。海猫の鳴き声。市場の喧騒。
活気のある港町に、男が一人。両手を上に伸ばし、船旅で凝った身体をほぐしながら階段を昇る。
塩の張り付いた白塗りの建物。露天に並ぶ活き活きした青い魚。植木鉢の真っ赤なトマト。
全てが新鮮に映った。男は視界に広がる景色を、幼い頃に両親と行った遊園地に重ねていた。
生暖かい潮風。冷たいココナツジュース。柔らかな日射し。
何か、良いことがあるだろう。
そう、直感していた。
【備考】
『異国の港』をとにかく表現しよう、というのが魂胆の改正である。原文では港の表現に視覚しか使われておらず、もったいない。なので聴覚?視覚?触覚という順で描写をした。大きく異なるのは描写に体現止めのみを用いたことである。各描写が3つ並び、まるで詩のようにリズム良く構成されている。男の心が今にも踊り出しそうな様子が伝わっては来ないだろうか。
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