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【原文】
短針が丁度11を指していた昼のこと。俺は特にすることもなく家でせっせと時間を浪費していた。
ああ、つまらない。
iPhoneをベッドに放り投げ、懐かしい記憶を深淵から引きずり出す。
小さい頃小遣いを手に、駄菓子屋へ毎日通いつめていたあの頃。思い返せば俺は、そこから一歩も進んでいない。
いや、むしろ後退しているのかもしれないな、と一人自分を嘲った。
そうだ、どうしてもゲームソフトが欲しくて親に強請ったんだ。それなら小遣いを増やしてやるから貯めて買え、と言われたんだ。
結局貯金箱が貯金箱足り得たのは最初の三日間だけで、今までの四十年と約三ヶ月、ただの豚の置物だった。そして今日も小銭を待ちわびる金の亡者のような、お小遣いをせびる少年のような顔で俺に非難の目を向けてくる。
そういえば明日からまた仕事だ。一日中パソコンと睨み合わなければならない。ひとりでに口からため息が漏れ出る。
俺は仕事にうんざりした時モニターから目を逸らす。それをしたってそいつがどう思うわけでもないが、とにかく目を逸らす。そうすれば、あの馬鹿でかい箱と喧嘩しなくて済むような気がするのだ。
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