文章改正サンプル

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【改正文】 ああ、つまらない。 時計は11時を示す。ところがiPhoneは「まだ3分早いぞ早漏め」とせせら笑って電源を切った。生意気だ。 ああ、くだらない。 放り投げたiPhoneは机の上へ。正確にはそこへ築かれたゴミ山へ。それが起爆剤となって、雪崩を起こした。最悪だ。 ああ、面倒くさい。 雪崩の中に生存者が一匹。なんとも可愛らしいピンクの豚だ。背中に空いた穴から硬貨を入れて貰えるその時まで、辛抱強く耐え抜いていたのか。健気だ。 ああ、なつかしい。 そういえば、子供の時から我慢させていた。一日10円、一年で3650円。貯まったら駄菓子屋で大人買いをしよう。そう思って小学生の時に買って貰ったんだっけ。結局あいつは生まれてから今まで30円しか食べていない。豚肉100g30円。憐れだ。 ああ、やるせない。 この家庭内災害の処理が終わっても、やっぱり会社内災害(と呼ばずにいられるか! どうして部下の後始末に貴重な休日を使ってやる必要があるのか!)の処理が残っているのに。パソコンを起動するのも嫌になってくる。見ているだけで腹が立つので、ゴミ山もパソコンも無視して窓の外を見てみた。快晴だ。 ああ、いい天気だ。くそったれ。 【備考】 好みの別れる改正だろう。原文でも十分に読み物として楽しめる出来に仕上がっている。追憶の下りが少々唐突なので、このようにきっかけを与えてやるとよい。貯金箱を生き物のように扱うのは面白い部分なので、改正版でも取り入れた。最後にはごちゃごちゃに散乱した部屋と、何の曇りもない青空を対比して、男の今の有り様を表している。
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