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コウと関係を持ってしまった次の日、おれは田島さんに一通のメールを送った。
それは、昨日の今日で申し訳ないが、田島さんとの関係を白紙にしたいという、簡素な内容だった。
たいして返事を期待していなかったので、当然とも言えるんだろうけど……田島さんから返信は来なかった。
けれど、その数日後に実紅から呼び出しを受け、おれは彼女の家に出向いたのだ。
「どういうこと?」
インターフォンを鳴らすと直ぐ、実紅が玄関から顔を出した――と思えば、いきなりそう言われた。
「……やっぱり、聞いた?」
ここで言ってしまっていいのかと考えた後、とりあえずそう返してみた。
「聞いた。えぇ、聞きましたとも! ねぇ、そんなに彼……気に入らなかったの?」
思ってた通り、ちょっと怒り気味の実紅の口から、心配する様な一言が出て、僅かに胸が痛む。
「いや、田島さんは……いい人だった。けど……」
田島さんは本当にいい人だった。
だから余計に、自分のどうしようも無い感情に振り回してしまった事を改めて申し訳ないと思い、そして声のトーンが低くなった。
「……どうやら、田島さん自身の事じゃないみたいね。まぁ、いいわ。とりあえず中に入って」
「うん」
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