唯一の執着

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   「気にすんな。俺の、貸してやるから」 「んっ……でも……」 悪戯を仕掛けるように、赤く染まった耳を軽く噛みながら、囁いた。 俺の歯が触れた瞬間、腕の中の身体がビクッと震えたのを確認して、思わずニヤける。 「いいだろ。たまには言う事聞いて、甘えさせてくれよ」 さっきまで耳に触れてた唇を、そのまま下へずらして、今度は首筋へと移動する。 「え……コウ、甘えてるの?」 「……俺が、甘えちゃ悪いのかよ」 何とはなしに口にした言葉に、一都が驚いたように目を見開いて聞くので、さっきまで吸い付いていた首筋から、そっと唇を離した。 ったく、原因は一都の所為だっての。 お前がこんなに綺麗な顔してるから、俺のクラスの奴等にまで話題にされんだよ。 「ううん。コウも、そういうこと言うんだなって思って」 「は?」 「いや、コウって年齢のワリには大人っぽい感じで……。どっちかと言えば、『甘える』とかって、鬱陶しがる方だと思ってたから……」 一都の言葉に、惜しい事をしたと後悔した。 折角、大人びたイメージを抱いてくれてたのにも関わらず、さっきの一言でぶち壊しだ。 もはや、前言撤回が出来そうになさそうだから……代わりにと、言い訳を口にした。
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