唯一の執着

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    一都に会えない時間は、すげぇつまんねぇ。 「弘平、菓子いるか?」 「あー。おぉ」 特に、一日のうちで一番つまんねぇのは……一都に会えない時間が長い、学校に行っている時だ。 早く、学校おわんねーかな。早く、一都に会いたい。 幸い、今日は金曜で、明日、明後日と学校が休みになる。それに託けて、一都を家に泊めさせるのも、いいかもしんねぇ。 「弘平、どうした? 最近ずっと、上の空じゃん」 「んー、そうか~?」 学校ではよくつるむ、柳井(やない)に聞かれて、気の無い返事をした。 「その返事はどうよ? それともアレか。この後、楽しみがあんのか?」 「別に」 柳井には素っ気無く答えては見せたが、実は凄い楽しみだ。 早く、一都の顔が見たい。 そんで、ぎゅっと抱き締めて……寝るまでずっと、二人きりで居たい。 「またまたぁ~。本当は学校終わってから、ヨロシクするんだろ?」 平静を装ったつもりで答えたんだけど……ほんの少し顔に出たみたいだ。 柳井に指摘されて、思わず口を手で覆った。 「ふぅーん、当たりか」 けど……どうやら鎌を掛けられていただけらしく、俺の反応を見ると、柳井は満足そうに呟いて、ニヤニヤしていた。 こいつ……俺をハメるとは、やな奴だ。
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