唯一の執着

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  「そいえば弘平、水谷と付き合ってんだよなー?」 柳井がしれっと、言ってきた。 「そうだ、そうだ! あの水谷さんだよな! あー、弘平が羨ましいぜっ」 それに対してジッと、無言で柳井を見ていたら、俺達の会話を聞いてたらしい他の奴が、いきなり話に割って入ってきた。 「は? もう……別れたけど」 ちなみに、こいつ等が言っている『水谷』とは、一都の事ではなく、同じ学校に通う一都の妹、明菜のことだ。 こいつ等の言う通り、以前の俺は、一都の妹の明菜と付き合ってた。 けれど、それは一都に近づく為に、利用しただけの付き合いだった。 自分でも酷いやり方だったとは思うが……結果として、一都が手に入ったのだから、今更後悔することは一つも無い。 ただ……一方的に利用しちまった、明菜にはちょっと罪悪感は募るけど……。 「えぇー! マジかよ、なぁーんで?」 「……想いの不一致ってやつだ」 この学校で明菜は『可愛い』と言われ、なかなか有名だった。 だから、俺と付き合うことになった時は、周りから結構騒がれたものだ。 けど、反対に別れた直後は、周りに騒がれていない。 って言っても、明菜とは出会ったら普通に挨拶とかするし、態度は付き合ってた時とあまり変わっていない。 だから、こいつ等みたいに、俺達がまだ付き合ってると思ってる奴が殆どだろう。
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