唯一の執着

6/14
前へ
/40ページ
次へ
   明菜自身、別れた事を公にしてないようだし、俺も自らは口にしないタイプなので、こうして聞かれるまで、何も言ってない。 「何だ、それ? あー、勿体無い。水谷さん、あんなに可愛いのに……」 「確かに、可愛いと思うけど……気持ちがなかったら、しょうがないだろ」 明菜には悪いけど、俺は最初から一都しか見てなかったし……。 「あ、そういえば……水谷さんのお兄さんも、綺麗な顔してるらしいじゃん。弘平は、会った?」 「あぁ?」 それまで、無表情に近い顔で接していた俺が、そいつの言葉を聞いて……急に険しい顔つきになった。 何でお前が、一都の事を知ってんだ。 「えっ、何で弘平が怒ってんの? あれ、もしかして……仲が悪かったとか?」 「……別に。けど、なんでお前がそんな事、知ってんだ?」 怒ってると言われて否定はしたが、本当はすっげぇ腹が立った。 俺以外が、一都の事を知ってると思うと、ムカムカする。 一都は、俺だけのもんなのに……。 「あ、いや……違うクラスの奴で、水谷さんのお兄さん見た事ある奴が、綺麗だって言ってたのを聞いたんだ。だから、本当かと思って……」 「そっ……。別に、どってことねぇよ。第一、男だし」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加