唯一の執着

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   「今日はこのまま、泊まってけよ」 やっと鬱陶しい学校が終わって、急いで家に帰った。 別に、俺より先に一都が来るはずないって思うけれど……。 やっぱり、一秒でも早く会いたいから、家まで早足で帰った。 すると、やっぱりそこには一都の姿は無かったけど……家に入って暫く経った後、チャイムが鳴って、一都がきた。 学校で相当苛ついた所為もあって、一都の顔を見たらホッとして、気付いたらギュッと抱き締めていた。 そんな俺の突然の行動に、一都は戸惑っていたけど、それでも嫌がりはせず、寧ろ俺の背中にやんわりと手を置いてきた。 そんな、二人だけの時間が嬉しくて……その後、自分の部屋に招いた後、ベッドに座った俺の上に座らせて、再び後ろから抱き締めた。 で、さっきの台詞に至るわけだ。 「え、でも……」 「何? 明日、用事あんの?」 それでも帰さねぇよ、という思いを込めながら、抱き締める腕に力を込める。 「いや、用事なんて無いんだけど……。ただ、聞いてなかったから……着替え、持ってきてないなと思って」 自分の胸元近くに置かれた俺の手の上に自分の手を重ねながら、一都が俯いて言った。 勿論、耳が真っ赤でだ。
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