缶コーヒーと、無愛想と無表情

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「家どこ? 不審者が出ると危ないから、送る。」 「でも、ハタさん交番に戻らなくても…」 「今日は非番。別にこの格好、私服警官とかじゃねーから。」 嬉しいけど、お言葉に甘えたいけど、でもハタさんの迷惑にはなりたくない。 その場で動けずにいると、ハタさんは付いてこいと言わんばかりに、私に背中を向けて歩き出す。 「ほら、行くぞ。」 ハタさんに続いてコンビニを出ると、冷たい風が頬を切る。 ハタさんが手に持っていたコーヒー缶のプルタブを開けるのを見て、倣うように私も袋からもう1つの缶を取り出した。 雪を踏みしめる2人の足音が重なる。あとは、たまにどちらかがコーヒーを啜る音。 いつもは交番の前に立つハタさんに、一方的に話しかけるしかできないけど。今日は隣を歩いているんだ。同じ歩調で、同じ道を。
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