煙草と、無愛想と無表情

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それから卒業の日までずっと、わざと遠回りをして学校に通った。交番の前を通らないように。 そして高校を卒業した。 これで学校に行くのは最後かと思っていた。 けど、数日後。志望校に受かって、わざわざ学校に出向いて先生方に合格報告をして、ついでに新高3生に向けてちょっとした受験アドバイスの講演をさせられた。 その帰り、久々にあの道を通ってみようと思った。 別に話さなくていい。顔を見なくてもいい。 ただ、少しでもハタさんの近くに行きたかった。これがもう最後だから。 たまに深呼吸をしながらいつもよりゆっくり歩き、とうとう交番に差し掛かる。 ハタさんが窓ガラス越しに外を見遣ることはないだろうけど、わざと猫背で歩き、髪で横顔を隠す。 交番の前を通り過ぎた時、さよなら、と心の中で小さく呟いた。 背中にまとわりつく未練を振り払おうと歩調を速める。 今度こそ、本当の本当にさようなら。 「おい、無表情女子高生。」 だから、まさかハタさんに呼び止められるなんて思っていなかった。
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