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それは、諦めの悪い私への最後のチャンスか、はたまた諦めの悪さに対するとどめの一撃なのか。
ハタさんは交番のドアを開けっぱなしにしたまま、小走りで近づいてくる。
「…何ですか。」
「この前、忘れ物しただろ。」
ハタさんは、この前の告白なんてなかったかのように淡々としていた。
あまりにも普通の様子が心臓をキリキリと締めつけて、息苦しくさせる。
「忘れ物、ですか…?」
絞り出した声は、自分のものじゃないみたいだった。
忘れ物…じゃないけど、落とし物だったらあの飲みかけの缶コーヒーが思い出される。ハタさんはそのことを指しているのだろうか。
「私、何日も前の飲みかけなんていらない…え、」
喋っている途中で突然差し出されたのは、所属先とか階級だとか、ハタさんのフルネームが書かれた名刺。
つい条件反射で受け取ってしまった。
これを貰えってこと?
訳が分からず顔を上げると、ハタさんはぶっきらぼうにただ一言。
「裏。」
言われた通り裏返すと、ボールペンで走り書きされた文字が。
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