3万円と、無愛想と無表情

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「ハタさん、こんにちは。」 「交番の中にまで入ってくんのは初めてだな。用事がないんなら追い出すぞ。」 「学校帰りに道端で3万円拾いました。」 「壮大な拾い物をしたな、オイ。」 というわけで、片思い歴ほぼ3年目で初めての交番潜入です。 「…んで、落とし主が現れたら3万円の5%から20%、3か月経っても現れなかったら全額貰える権利がお前にはあるから。」 「そうですか。権利いらないです。」 手続きはあっさり終わってしまった。 もう少しハタさんと一緒にいたかったけど、むやみに長居をして仕事の邪魔をしたくない。 地面に置いていた鞄を取って立ち上がると、ハタさんが私を呼び止めた。 「おい。」 ハタさんが何か言いたげにこちらをじっと見ている。 いつも朝は目が合ったって無表情でいられるのに、いつもと違うシチュエーションだからか、なんだか今日は特別恥ずかしくて。 唇をきゅっと結んで、何もない右下に視線を落とした。 なんとか無表情を崩さずには済んだけど。
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