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ここへ、唐突に先輩が言った。
「皆星動物園、行ったことある?」
いきなり何を言い出すんだ。
僕は、わざと冷ややかに答える。
「いえ。一年経ちますが、社外の友達はいませんし、あまり動物園とか遊園地とか、この地域のそういうのよくわかりません。」
先輩の調子は変わらない。
「じゃあ、埋め合わせにさ、動物園でも行かない?
色々教えてあげるよ♪」
ニカッと笑う菊谷先輩。
きっと、今の僕の気持ちなんてわかっていまい。
悔し紛れに、答えてやった。
「いいですけど。」
これでいいんだよ。
僕は、菊谷先輩のただの後輩なんだから。
だから、ここで無理矢理キスなんてしても、何も変わらない。
酔った菊谷先輩は、今夜のことなんて忘れていて、僕は儚い夜の記憶に、一人心をかき乱され続けるだけだ。
しかし、動物園でなら、きっと楽しい一日を過ごせるんじゃないかな?
先輩後輩もなくさ。
(※[42])
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