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「もしもし?…えぇ、大丈夫よ?…え?あはは!やだぁ…うん、そう?分かった、じゃあ待ってる…」
朝の家事が終わる頃
『あと十分で着くからね?』と、明るい声で話す優斗からの電話を切り
彼女はベランダへ出て、タバコに火をつけた。
『そんな生活に何の意味があるの?自由になりたくないの?』
優斗の言葉をふと思い出して、ぼんやりと空を見上げる。
きっと意味なんてない。例え夫が死んだとしても何も変わらない。
夫が死んで、優斗と結婚したとしても
本当の自由なんてこの世界にはない…
「さてと…」
タバコの火を灰皿に押し付けて、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
うんざりするようなルーティンワークを絶やさないように
成美は今日も、コーヒーの香りを漂わせた。
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